この記事を読むとどうなるの?
2020年は、新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、日本の経済にどのような影響を与えたのかを理解できます。感覚ではなく、図表や数値で読み解きながら実態を把握していきます。シリーズ全てを読んでいただければ全体像がつかめます。中小企業の経営者や幹部に人に向けて記事を書いています。中小企業経営者・幹部の方々の一助になれば幸いです。
取引環境と企業間取引の状況
1,新型コロナウイルス感染症が企業間取引に与えた影響
①感染症流行前後の取引条件の変化
図表5-1新型コロナウイルス感染症流行前後での受注量の変化
「製造業」で7割以上、「サービス業」「その他」で5割以上の企業が受注量が減少したと回答しています。
図表5-2優位性の有無別に見た、新型コロナウイルス感染症流行前後での受注量の変化
競合他社と比較して優位性を有する企業の方が受注量減少の割合が低い傾向にあります。優位性は重要な要件ですね。
図表5-3新型コロナウイルス感染症流行前後の受注単価の変化
いずれの業種も受注単価に「変化なし」が8割以上となっていますが、1割程度の企業が受注単価が低下しています。
図表5-4新型コロナウイルス感染症流行前後の決済条件(支払サイトや支払方法)の変化
ほとんどの企業で決済条件の「変化なし」でした。
感染症流行で需要は減少したために、取引先からの受注量は多くの企業で減少しましたが、取引条件の悪化は一部の企業に留まったことがわかります。
②感染症流行前後の取引関係の変化
図表5-5新型コロナウイルス感染症流行前後の取引関係の変化
代表的な取引先との取引関係については、8割以上の企業では「変化なし」でしたが、1割の企業では、「自社の立場が弱まった」と回答しています。
図表5-6販売先企業から不合理な計画変更や値下げなどの要請の有無
リーマンショック時との比較でも1割程度は不合理な計画変更や値下げ要請がありました。
図表5-7リーマンショック時と比較した、不合理な計画変更や値下げなどの要請度合
取引条件が悪化した半数程度の企業でリーマンショック時以上に強い変更要請がありました。企業のよって立つポジションがどこにあるのかで取引条件が決まります。弱い立場のポジションに立っていると取引条件の悪化やしわ寄せの影響を受けます。ポジショニングは重要です。
③企業間取引におけるデジタル化
図表5-8従業員規模別に見た、リモート商談への対応状況
従業員規模が大きくなるにつれてリモート商談に対応している企業の割合が高くなる傾向にあります。また、感染症流行後に従業員規模が大きい企業においてリモート商談への対応の必要性が高まりました。
図表5-9業種別に見た、電子受発注への対応状況
感染症流行をきっかけに対応した企業は少ないです。
図表5-10リモート商談・電子受発注に対応したきっかけ
リモート商談では、4割以上の企業、電子受発注では6割以上の企業が取引先からの要請を受けて対応しています。
2,取引適正化の状況
①価格転嫁の状況
図表5-11直近1年のコスト全般の変動に対する価格転嫁の状況(受注側事業者)
「概ね価格転嫁ができた」と回答した企業は2割以下で、4割近くの企業が「転嫁できなかった」と回答しています。
②代金支払の状況
図表5-12代金の支払期日の決定方法別に見た、支払期日の状況(受注側事業者)
自社が決定できる立場にいる企業は有利な条件で早期に支払期日を設定できています。
図表5-13受取手形の支払サイト(受注側事業者)
受取手形の支払サイトは、90日(3か月)や120日(4か月)が多く占めています。支払サイトが長期化すればその分資金繰りのために運転資金が多額に必要となります。自動車産業は、ピラミッド構造が確立しており、立場が弱い町工場が受け取る手形サイトは4~6か月と長期化しています。
まとめ
シリーズ全体で中小企業がコロナ感染症流行でどのような影響を受けてきたのかを見てきました。あまり影響を受けずに済んだ企業もあれば、深刻な影響を受けている企業もあることがわかりました。
厳しい状況になればなるほど自社がどのポジションに立っているのかが重要であることが理解できます。企業が提供できる製品やサービスがいかに魅力的であるかが重要です。魅力的な商品を提供できれば良いポジショニングに立てるため、サプライチェーンにおいても、価格交渉や取引条件においても優位に交渉することができます。魅力的な商品を提供するには自社の経営資源をどのように構築すればいいのかに専念しましょう。