中小企業はどのように事業承継を進めればよいの?
日本における中小企業は、高品質なものづくりを支える製造業やおもてなしの接客サービスを行う小売業・サービス業等、雇用の受け皿として大切な存在です。今その中小企業に立ちはだかる問題は、経営者の高齢化による事業承継がうまく進んでいないことにあります。5回にわたって中小企業の事業承継の現状や問題点、実態等をグラフを使いながらわかりやすく解説していきます。
この記事を読むとどうなる?
事業承継って何が問題なのか?中小企業の事業承継を取り巻く現状や実態がわかります。また、事業承継のやり方にはどんな方法があるのか等もわかってしまいます。
1 中小企業における事業承継の現状
①後継者確保の困難化
調査対象企業約4000社のうち60歳以上の経営者の約半数が廃業を予定していると回答しています。
図表6 後継者の決定状況
出典 日本政策金融公庫総合研究所「事業承継のインターネット調査」
図表7 同業他社と比べた業績
出典 日本政策金融公庫総合研究所「事業承継のインターネット調査」
廃業予定企業の中には、他社に比べて業績が良い、やや良いを合わせると30.6%を占めている。実に残念!!
図表8 今後10年間の事業の将来性
出典 日本政策金融公庫総合研究所「事業承継のインターネット調査」
今後10年間の将来性についても約4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と回答しています。またも実に残念!!
②親族外承継の増加
在任期間が35年以上40年未満(現経営者が事業を承継してから30年から40年経過している)企業は、9割以上が親族内承継です。
在任期間5年未満では親族内承継の割合が35%にまで減少し、親族外承継が65%に達しています。
図表9 経営者の在任期間別の現経営者と先代経営者との関係
2 早期取り組みの重要性
後継者の育成期間も含めれば、事業承継の準備には5年~10年程度を要することから、平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえると60歳ごろには事業承継に向けた準備に着手する必要があります。
図表10 経営者の年齢別にみた事業承継の準備状況
経営者が60歳代で準備できていない割合が57.1%
経営者が70歳代で準備できていない割合が50.5%
経営者が80歳代で準備できていない割合が52.3%
経営者60~80歳代で半数以上が準備にも取り掛かっていないのが現状です。
図表11 後継者の育成に必要な期間
事業承継は、差し迫った理由がなければ日々の多忙さに紛れて対応を後回しにしてしまうやむを得ない側面もあります。しかし、経営者の交代があった中小企業において、交代のなかった中小企業よりも経常利益率が高いという事実があることは重要な視点です。(図表12)
図表12 経営者の交代による経常利益率の違い
出典 ㈱帝国データバンク「COSMOS1企業単独財務ファイル」、
「COSMOS2企業概要ファイル」再編加工
会社を残したいのであれば、事業の将来を見据えた積極的な対話を通して、事業承継に向けた早期・計画的な取り組みを経営者が実行していくことが大切です。
次は、【シリーズ5-3】経営者引退に伴う経営資源についての解説になります。