働き方を長期視点でどう考えたらいいの?
技術革新による情報化の更なる進展により、私たちは働き方を長期視点で考える必要に迫られています。全体の潮流を眺めながらどうやって働けば幸せな生活を過ごすことができるのかを考えていきます。
この記事を読むとどうなる?
情報化やAIの登場で仕事を失うかもしれないという漠然とした不安に支配されて正しい選択が落ち着いてできない状況にある中で、誰も将来がどうなっていくのかわからないし、自分はうまく回避できるであろうという根拠のない自信で過ごしている人がほとんどだと思います。
時代の流れに合わせていくことが賢い生き方であることは賛成いただけるでしょう。時代の潮流と付き合わせた視点から解説していきます。働き方のヒントが得られます。
技術革新がどんな変化を起こすの?
情報化の更なる進展やAI・ロボット等の新技術が普及すれば3つの影響が起こります。
①AI等の導入で、中スキルの雇用が減少し、低スキルと高スキルの業務に二極化が進む。
②情報通信ネットワークの発達やクラウドの普及により、フレックス勤務やテレワーク等の柔軟な働き方が普及する。コロナの影響で加速度が増している。
③ネットを通じた労働市場の受給のマッチング市場が拡大し、細分化した業務をネット上でマッチした労働者にアウトソーシングしたり、オンラインの仲介で働くフリーランスという働き方が普及する可能性がある。
ISCO-88分類による業務の区分
※高スキル業務は、管理職、専門職、技師、准専門職
※中スキル業務は、事務補助員、技能工従事者、設備・機械の運転・組立工
※低スキル業務は、サービス・販売従業者、単純作業従業者
過去からの学び
過去のケースで労働者が機械に代替された例を考えると、産業革命により一時的に失業が増えましたが、工場労働者という新しい雇用が創出されたので、失業が解消されています。
今回も自動化されていない分野での労働需要が増えることや新しい業務が生まれる可能性があります。
1990年代半ば以降のIT技術の普及が雇用にどのような影響を起こしたのか見てみましょう。
図 1-1 労働市場の二極化
IT技術により、中間層による定型業務を代替することが可能となりましたが、人手が必要な労働や知的労働の仕事は代替することはできませんでした。中スキルの労働需要の減少、低・高スキルの労働需要の増加が起こり、労働市場の二極化が進みました。
図1-2 定型業務集約度とIT使用頻度の国際比較
図1-2(2)から仕事でITを使う頻度が高いほど、定型業務が少ないという負の相関関係があることは国際的にも同じであることがわかります。
今後考えられる事
AI・IoTの導入が進むとどのような影響があるのでしょうか。
図1-3 AI等の新技術による雇用への影響
専門性の高い職業やコミュニケーションを必要とする職業の増加が見込まれる一方、一般事務や総務・人事・経理等の定型業務が多い職業が減少すると予想されます。
接客・対人サービスや事務系専門職は、非定型業務なので企業によって対応が異なると考えられます。
技術進歩がもたらす柔軟な働き方
ネットを通じたコミュニケーションや情報・データ処理を可能にすることで、仕事の進め方や働く場所・時間も変化させています。
図1-4 新技術と柔軟な働き方の関係
AI等の活用とそれに伴う組織改編に取り組む企業は、大手企業を中心に取り組んでいます。しかし、ICT専門の人を配置してまでの変革を考えている企業はまだ少ないことがわかります。
図1-5 テレワークの現状
企業のテレワーク導入の目的は、図1-5(2)のとおり移動時間の短縮、女性・高齢者への対応等のためです。
この資料は2017年ですが、今回のコロナのような非常時の対応で導入目的を加速されたと考えられます。
図1-5(4)のとおり、国際的に見ると日本の取り組みは遅れています。柔軟な勤務形態を実施している人の割合が、日本は20%ですが、G7諸国の平均は63%となっています。
図1-6 アウトソーシングの現状
アウトソーシングについては緩やかな増加傾向にあります。
図1-7 日本におけるクラウドソーシング
クラウドソーシングとは、インターネットを通じて単発の仕事を不特定多数の人に委託する方法です。
フリーランスとして働く人のうち、クラウドソーシング利用の割合は12%で57%の人は人脈により仕事を獲得しています。
アメリカでは、フリーランスのオンライン化が6割といわれているので、日本でも今後伸びる余地が大きいともいえます。
図7-1(4)(5)からクラウドソーシングでは現在は副業レベルの収入ですが、今後は仕事分野もデータ入力やWebサイト、ネットショップ等のIT分野だけでなく広がりとともにクラウドソーシングが拡大していくと予想されます。
次回は、女性・高齢者の働き方について考えていきます。