中小企業はどのように事業承継を進めればよいの?
日本における中小企業は、高品質なものづくりを支える製造業やおもてなしの接客サービスを行う小売業・サービス業等、、雇用の受け皿として大切な存在です。今その中小企業に立ちはだかる問題は、経営者の高齢化による事業承継がうまく進んでいないことにあります。5回にわたって中小企業の事業承継の現状や問題点、実態等をグラフを使いながらわかりやすく解説していきます。
この記事を読むとどうなる?
事業承継って何が問題なのか?中小企業の事業承継を取り巻く現状や実態がわかります。また、事業承継のやり方にはどんな方法があるのか等もわかってしまいます。
事業承継のあるべき姿
1 事業承継に向けた準備
事業承継を円滑に進めるためには次のステップを踏みます。
図表15 事業承継に向けたステップ
2 事業承継に向けた5ステップの進め方
ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性に認識
概ね60歳を迎えた経営者に対して承継準備に取り組むきっかけを提供するために「事業承継診断」を実施します。
ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)
① 会社の経営状況の見える化
主な取り組み
・経営者所有の不動産で、事業に利用しているものの有無、当該不動産に対する会社借入に係わる担保設定、経営者と会社間の貸借関係、経営者補修の有無等の会社と個人の関係の明確化を図ります。
・適正な会計処理が行われているかを点検します。
・保有する自社株式の数を確認するとともに株価評価を行います。
・商品ごとの月次の売り上げ・費用の分析を通じた自社の稼ぎ頭商品の把握や、製造工程ごとの不良品の発生状況の調査を通じた製造ラインの課題の把握、在庫の売れ筋・不良の把握や鑑定評価の実施等を行います。(磨き上げにつなげます)
・「事業価値を高める経営レポート」や「知的資産経営報告書」を活用して自社の事業価値の源泉を適切に認識します。
・経済産業省の「ローカルベンチマーク」を活用して自社の業界内における位置づけを客観評価します。
② 事業承継課題の見える化
・後継候補の有無を確認する。候補者の能力、適性、年齢、意欲等を踏まえて後継者に相応しいかどうかの検討をします。
ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
「磨き上げ」の対象は、業績改善や経費削減にとどまらず、商品やブランドイメージ、優良な顧客、金融機関や株主との良好な関係、優秀な人材、知的財産権や営業上のノウハウ、法令順守体制等を含みます。
① 本業の競争力強化
「ローカルベンチマーク」を活用します。
② 経営体制の総点検
社員のやる気を向上させる、役職員の職制、職務権限を明確にし、各種規定類、マニュアルを整備し、業務が効率よく流れる体制を作ります。
また、事業に必要のない資産や滞留在庫の処分や余剰負債の返済を行って経営資源のスリム化に取り組むことも重要です。
ステップ4-1:事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)
(1) 事業承継計画策定の重要性
事業承継計画は、後継者や親族と共同で策定し、関係者と共有しておくことが望ましい。
(2) 事業承継計画策定の前に
経営者の経営に対する思い、価値観、新庄を再確認するプロセスは必要です。そもそも創業者は「なぜその時期に」「なぜその事業を」始めたのかの振り返りから始めることが有効です。
① 事業承継計画の策定
策定プロセスにおいて現経営者と後継者、従業員の関係者間で意識の共有化を図ることに重点をおくことが重要です。
ステップ2(経営状況・経営課題等の把握(見える化))を十分に実施することが事業承継計画の策定の前提となります。
・自社の現状分析
・今後の環境変化の予測と対応策・課題の検討
・事業承継の時期を盛り込んだ事業の方向性の検討
・具体的な目標の設定
・円滑な事業承継に向けた課題の整理
ステップ4-2:M&A等のマッチング実施(社外への引継ぎの場合)
① M&A仲介機関の選定
② 売却条件の検討
ステップ5:事業承継の実行
次回は、【シリーズ5-5】事業承継の実態 です。