働き方を長期視点でどう考えたらいいの?
技術革新による情報化の更なる進展により、私たちは働き方を長期視点で考える必要に迫られています。全体の潮流を眺めながらどうやって働けば幸せな生活を過ごすことができるのかを考えていきます。
この記事を読むとどうなる?
情報化やAIの登場で仕事を失うかもしれないという漠然とした不安に支配されて正しい選択が落ち着いてできない状況にある中で、誰も将来がどうなっていくのかわからないし、自分はうまく回避できるであろうという根拠のない自信で過ごしている人がほとんどだと思います。
時代の流れに合わせていくことが賢い生き方であることは賛成いただけるでしょう。時代の潮流と付き合わせた視点から解説していきます。働き方のヒントが得られます。
社会人の学び直しとキャリア・アップ
企業が行う人的資本投資額は1990年代以降減少傾向にあり、人材教育を企業のみで行うことには限界があります。
そこで、働き手が自ら主体的にキャリアを形成していくことが重要となっています。
自己啓発・学び直しにはどんな効果があるの?
30歳以上の男女を対象に自己啓発を行った人と、同様の属性を持つ自己啓発を行わなかった人と比較して1~3年後にどのような差が見られるのかを示したのが図4-1です。
図4-1 自己啓発とその効果
1年後は年収に有意な差が見られませんが、2~3年後には年収に明らかな差が出ることがわかります。
自己啓発をするために犠牲にするのが図4-1(2)に示されています。時間とお金を費やして自己啓発に専念しなければ目的を達成できません。
自己啓発の内容別の効果
図4-2 自己啓発の種類別にみた効果
自己啓発の内容として
①通学(大学・大学院、専門学校、公共職業訓練等)
②通信講座(通信制大学を含む)の受講
③その他(書籍での学習、講演会・セミナー、社内の勉強会等)
に分けて効果を測定してみました。
2年後の年収の変化(図4-2(2))はそれぞれ有意な効果を示しています。
就業確率や専門性の高い職業に就く確率では、通学の効果が高いが、通信講座では効果がでませんでした。
図4-2(3)自己啓発のコストは、効果がある分通学に勉強時間とお金をかけているのがわかります。
図4-3 学び直しをしている社会人学生の特徴
保健(医学、歯学、薬学)、社会科学、工学の分野が高いことが図4-3(1)でわかります。習得したい知識・技能・資格等では図4-3(2)のとおり専門的知識が70%以上で最も高く、論理的思考能力、問題解決能力、分析能力、プレゼンテーション能力等【シリーズ5-3】の企業が期待する能力を満たすために自己啓発で補う努力をしていることがわかります。
こうしたスキルを身に着けることで非定型型の業務に労働移動していくことが容易になります。
図4-4 学び直しの国際比較
日本は、学び直しがOECD諸国と比べて大きく下回っているのがわかります。
この背景は、
費用が高すぎること 37.7%
勤務時間が長くて時間がないこと 22.5%
関心がない・必要を感じない 22.2%
自分が望む教育課程がない 11.1%
受講場所が遠い 11.1%
質の良いリカレント教育を提供する教育機関が少ないことも活発にならない理由であると考えられます。
図4-5 リカレント教育の課題
日本のビジネススクールの質は、OECD平均よりも低いと評価(図4-5(1))されています。
また、大学が提供するカリキュラムと社会人や企業が期待するカリキュラムの不一致が大きいこともリカレント教育が進まない理由と考えられます。
最先端にテーマを置いた内容や幅広い仕事に活用できる知識・技能を習得できる内容や問題解決能力を養う内容が充実されれば学び直しも活発になっていくでしょう。
自己啓発をするためには、先ず自分が何をしたいのかを明確にすることに時間をかけて下さい。本当にそれは自分がやりたいことなのか?何度も自問自答してください。
自分の本気度を確認してから行動に移して下さい。なぜこんなにくどく書くのかというと、自己啓発は自分の時間とお金を犠牲にすることで成立するからです。
本気度が高ければ途中でくじけることなく、迷わずにつき進んでいく行動力が持続するからです。成功するまで継続すれば必ず自分の望む能力を身に着けることができます。
次回は、シリーズ最終回です。日本のイノベーションの現状を理解して対策を考えるヒントになればと考えています。