2020年は、連日のマスコミによる報道で、新型コロナウイルスに対する過剰な不安や恐れを持たされて私たちは思考停止状況になりました。1年半以上の不自由な生活を強いられたため(今後もまだ続く可能性がありますが)、日本の経済はどのようになっているのでしょうか。
この記事を読むとどうなるの?
2020年は、新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、日本の経済にどのような影響を与えたのかを理解できます。感覚ではなく、図表や数値で読み解きながら実態を把握していきます。感染症流行後の事業環境に適応するために財務基盤を強化して前向きに回復していくためにはどんな戦略が必要なのかを考えます。中小企業の経営者や幹部に人に向けて記事を書いています。中小企業経営者・幹部の方々の一助になれば幸いです。
感染症流行下における中小企業の資金繰りの動向
①資金調達環境の変化と金融機関の貸出態度
図表3-1業況判断DIの推移(企業規模別)
5回の数値落ち込み
最初の落ち込みは、バブル崩壊
2回目の落ち込みは、1997年4月消費税3%→5%に増税
3回目の落ち込みは、同時多発テロ
4回目の落ち込みは、リーマンショック
5回目の落ち込みは、消費税8%→10%に増税+感染症の流行拡大
図表3-2中小企業向け貸出残高の推移(金融機関業態別)
減少傾向にあった政府系金融機関の貸付残高が2020年に入り、大幅に増加しています。民間金融機関においても積極的に融資が行われました。この結果、倒産件数を抑えることができました。
過去記事【シリーズ5-3】中小企業の動向の図表3-7を参照してください。
倒産件数はバブル絶頂期以来の低さです。
②資金調達の動向
(1)財務キャッシュフローの動向
図表3-3財務キャッシュフローがプラスの企業の割合(自己資本比率別)
財務キャッシュフローとは、営業活動や投資活動のために調達した資金の増減を示しています。資金流出よりも資金流入が多い場合にプラスとなります。
図表3-3を見ると自己資本比率が低い企業ほど財務キャッシュフローがプラスとなっています。自己資本比率が低い=財務構造が脆弱な企業ほど借入金に依存した経営を行うことになります。元金返済猶予期間が終了すると返済が始まりますので、猶予期間中にキャッシュフローを確保できる製品に集中したり、業態変更も含めた将来を見据えた大胆な改革をしていく必要があります。社長の事業意欲に依存していますし、社長の起死回生を期待したいです。
(2)金融機関からの資金調達
図表3-4感染症流行後の金融機関からの借入状況(業種別)
宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業で高い割合となっています。
図表3-5感染症流行後の金融機関からの借入状況(自己資本比率別)
借入=将来の返済なので、返済原資が必要です。2019年時点で自己資本比率20%未満の企業は、事業再構築等のように抜本的な経営見直しを図って返済原資となる商品、サービスを考えましょう。
③手元現預金に対する意識の変化
図表3-6調達した資金の使い道(業種別)
「赤字補填や当面の資金繰り(人件費・家賃の支払等)」や「手元現預金の積み増し」等の守りの資金確保です。
図表3-7安定的な事業継続のために必要だと考える現預金水準
感染症流行後は、いつ正常化するのかわからないので、月商3か月以上の現預金が必要だと考える中小企業者が50%を超えています。
④設備投資に対する意識の変化
図表3-8固定資産の前年同期比成長率(2020年)
外部からの資金調達が十分にできなかった場合、資産の売却で資金確保を検討することになります。宿泊業、飲食サービス業では資産が減少しています。
図表3-9設備投資の目的
「設備の代替」、「維持・補修」は感染症の影響を受けずに優先的に投資されますが、「合理化・省力化」、「情報化関連」、「新規事業の進出」等は、感染症の影響を受けて後回しとなっています。感染症の影響で本来投資するべき設備をできずにいる企業の存在が伺われます。
関心の高まる多様な資金調達手段
①コミットメントライン
コミットメントライン(銀行融資枠)とは、銀行と企業があらかじめ設定した期間及び融資枠の範囲内で、企業の請求に基づき、銀行が融資実行することを約束(コミット)する契約のことです。融資の実行を金融機関が拒絶することができないのが特徴です。利点としては、突発的に大口の仕入資金需要が発生する業態で活用検討の余地があります。また、自然災害等の事業継続リスクに備えるために活用の余地があります。但し、留意点として①金利とは別に手数料(コミットメントフィー)を支払う必要があること、②契約締結には所定の審査があることを覚えておきましょう。
②資本性劣後ローン
貸手にとってリスクの高い商品ではありますが、感染症流行による取引先への影響を踏まえて民間金融機関の取り扱いが増加してきました。
企業にとっての利点
ⅰ期限一括償還のため毎月の返済負担がないので資金繰りが一時的に改善します。
ⅱ金利設定が業績連動型のため金利負担を抑えることができます。
ⅲ金融機関の審査で、資本性劣後ローンが自己資本とみなされることです。
企業にとっての留意点
ⅰ好業績の時は通常の融資よりも高い金利を支払う必要があります。
ⅱ資本的性質はあるものの、実態としては借入金です。
ⅲ金融機関からの前向きな継続支援が得られる財務状態まで改善しておく必要があります。
④クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の個人から資金を集める方法を指します。
ⅰ「寄付型」は、資金提供者が寄付を行う形態
ⅱ「購入型」は、資金提供者がリターンとしてモノやサービスを得る形態
ⅲ「融資型」は、資金支援者は金銭的なリターン(利息)を得ることができます。
ⅳ「株式型」は、個人投資家へ未公開株式を提供することです。
図表3-10クラウドファンディングを活用したい理由
「アイディア勝負で資金調達できる」ことが魅力的なので活用したいと考えています。
図表3-11クラウドファンディングを活用した資金調達の目的
クラウドファンディングは、資金調達だけでなく、新しい商品のテストマーケティングの手段として活用しています。感染症流行下で新製品や新サービスの提供を検討する企業は、こうした資金調達を有効活用することも選択肢として考えてはいかがでしょうか。
次回は、とても「ためになる情報」です。経営計画を作成するためのツール・ヒントを書きますので、引き続き読んでいただければ幸いです。